OpenAI、Apple訴訟に反論 元社員とのメッセージも公開
OpenAIが、Appleから起こされた企業秘密訴訟に正面から反論しました。8月3日に公開した公式文書には、Apple側の弁護士とのメールに加え、元AppleエンジニアのChang Liu氏とApple社員のiMessageも収録されています。訴訟そのものは7月から続いていますが、今回は両社の食い違いを読者自身が追える材料が初めてまとまって出てきました。

「連絡したのに返事がなかった」が食い違う
Appleは、2月にOpenAIへ懸念を伝えたものの返答がなかったと主張していました。OpenAIの説明は違います。Appleの外部弁護士が、姓を取り違えて別人にメールを送り、その後OpenAIの法務責任者と話したと誤って記したというのです。OpenAIは、Apple側もこの誤送信と会話がなかったことを認めたとし、やり取りを公開しました。

ここはどちらかの言い分を先に事実扱いすべき場面ではありません。ただ、公開されたメールを見る限り、訴訟前の連絡経緯がAppleの説明ほど単純ではなかったことは分かります。OpenAIは、具体的な訴えを知らされないまま5カ月後に提訴されたと主張しています。
退職後のアクセスを誰が管理すべきだったのか
もう一つの焦点はChang Liu氏です。Appleは、同氏が退職後も機密情報へアクセスしたと訴えています。これに対しOpenAIは、Apple社員がLiu氏へファイルの場所や設計上の判断を尋ねていたメッセージを提示しました。Liu氏がAppleの情報へ触れられる状態が残っていたのは、本人による侵入ではなく、退職者の権限を切れなかったApple側の管理問題だという反論です。
OpenAIは、ハードウェア責任者のTang Tan氏についても、他社の機密情報を持ち込ませない方針をチームへ伝えていたと説明しています。一方、これらは被告であるOpenAIが選び、公開した資料です。メッセージの前後関係やApple側の証拠を含め、裁判所の判断はまだ出ていません。
AI端末の開発競争が法廷へ持ち込まれた
Appleの訴訟はOpenAI、io Products、Tang Tan氏、Chang Liu氏を被告とし、未発表ハードウェアに関する企業秘密の不正取得を主張しています。Tang氏はAppleでiPhoneやApple Watchの製品設計を率いた人物で、現在はOpenAIのハードウェア開発を担います。Jony Ive氏は被告ではありませんが、io Productsを共同設立し、OpenAIのAI端末計画に深く関わっています。
そのため今回の反論は、単なる法務部同士の応酬では終わりません。OpenAIがApple出身者の経験をどこまで新しい端末へ生かせるのか。Appleは人材の移動と企業秘密の境界をどこに引くのか。まだ姿を見せていないAI端末の開発競争が、製品発表より先に法廷で具体化し始めています。
OpenAIの公開文書は、Appleの訴えが誤りだと確定させるものではありません。ただ、これまでApple側の主張を中心に見えていた訴訟へ、メールの宛先違い、退職後も残ったアクセス、Apple社員からの相談という別の輪郭を加えました。次に見るべきなのは強い言葉の応酬より、裁判所がどの資料を証拠として採り、AI端末開発にどんな制限を置くかです。
