AppleのOpenAI訴訟、元社員40人への保存通知で「個人の記録」まで広がった
Financial Timesは2026年7月18日、AppleがOpenAIで働く元Apple社員約40人に、文書や通信の保存を求める法的通知を送ったと報じました。AppleがOpenAIと元社員2人を訴えた段階では、争点は企業秘密、部品、採用、AI端末計画に見えていました。今回の通知で、訴訟はもう少し日常的な場所へ広がります。移籍した個人が持つメール、メモ、ファイル、会話の履歴が、OpenAIのハードウェア計画をめぐる証拠の入口になりました。

対象は約40人、保存通知は訴訟の外側に届いた
FTによると、Appleが送ったのはpreservation letterと呼ばれる通知です。訴訟に関係する可能性がある文書、記録、メール、通信を消さずに残すよう求めるもので、9to5MacもFTを引き、Appleが元社員にApple側弁護士との面談も求めていると整理しています。
ここで対象になった約40人は、Appleが最初の訴状で名指ししたTang Tan氏とChang Liu氏だけではありません。MacRumorsは、OpenAIで働く元Apple社員は400人超とされ、その一部に保存通知が届いたと説明しています。つまりAppleは、2人の行動だけでなく、OpenAI側へ移った人材の周辺まで証拠保全の網を広げたことになります。

| 項目 | 確認した内容 | 読者への意味 |
|---|---|---|
| 対象 | FT報道では元Apple社員約40人 | 訴訟は2人の被告だけでなく周辺人材へ広がった |
| 要求 | 文書・通信・記録の保存、面談要請 | AI端末計画の前に証拠保全が争点になった |
| 未確定点 | Appleの主張はまだ裁判所の認定ではない | 製品仕様ではなく手続きの進展として読む必要がある |
AI端末の争点は、部品より先に記録管理へ移った
Appleの訴訟は、OpenAIの消費者向けAIハードウェアにAppleの企業秘密が使われたという主張から始まりました。既報では、未発表製品、部品、金属加工、電源やバッテリー、サプライヤー情報が争点として挙がっています。FTの今回の報道は、そこに個人の記録管理という層を足します。
AI端末はまだ正式発表されていません。だから読者が今見られるのは、製品写真ではなく、開発に入る前の境界線です。前職で得た経験と、持ち出してはいけない資料。採用面接で話せる専門知識と、見せてはいけないサンプル。家に置くAI端末の形より先に、その開発チームが何を記録として残し、何を使ってはいけないのかが問われています。
OpenAI側の否定も、記事では確定事実として扱わない
OpenAIはこれまで、Appleの主張に根拠がある証拠を認識していない、他社の企業秘密に関心はない、という趣旨で反論しています。TechCrunchもBloomberg経由の声明として、OpenAIが公正な競争と働く場所を選ぶ自由を強調したと伝えています。
そのため、今回の記事でもAppleの主張を事実認定のようには扱いません。保存通知が示すのは、有罪無罪ではなく、Appleが調査範囲を広げているという手続き上の事実です。OpenAIのAI端末が2027年以降の製品になるとしても、その前に人材移動、証拠保全、素材や部品の知識が、製品体験の土台をめぐる争いとして表に出てきました。
OpenAIのAI端末をめぐる話は、スピーカー型か、画面なしか、Jony Ive氏のデザインか、という見えやすい部分に寄りがちです。ただ、今回のFT報道で見えたのは、その手前にある記録の問題です。誰が何を知っていて、何を持ち出せず、どのメールやメモを残す必要があるのか。AppleとOpenAIの争いは、未発表のAI端末をめぐるデザイン競争であると同時に、AI時代の転職と企業秘密の境界をかなり細かく問う事件になっています。